大型バレル研磨機自作のこと
ここ数日何を作ってたかと言いますと・・・
これ↓を作っていました^q^
バレル研磨機!!
これがどういう機材なのか簡単に説明すると、
「磁力を帯びたステンレスのピンを回転させて金属の表面を叩いて磨く装置」ですね。
宝飾機材の中ではポピュラーな物なのですが、私もこの世界に入るまで全く知らない機材でした。
貴金属などの地金表面を地金よりも硬い物で強くこすると、表面のキズや凹凸が潰れて光沢が出ると共に地金を引き締めて強度を上げることができます。
それを自動でやってくれる機材、ということですね。
このバレル研磨機、もちろん市販品が色々なメーカーから出ていますが、そこは専門機材の常。
ちょっとお値段が張る物なんですね。
少量の研磨物しか回せないものから業務用の大型機材までピンキリですが、一番安いエントリーモデルでも数万円はいたします。
業務用となれば数十万~百万円以上するものもあるようで。
なかなか手が出しづらい商品ですよね・・・
だったら・・・作っちゃえばいいじゃないか!
ということで実は当方制作のバレル研磨機はこれが4台目となります。
今まで使っていた自作バレルは最大研磨量200gの中規模クラスでしたが、今回の目標は5倍のMax1000gを目指しました。
今回の記事はこの「1キロ級バレル研磨機」の制作記録となります。
まず、こちらの記事を読んでバレル自作を目指す方向けに簡単に仕組みを説明しておきましょうか。
仕組みは非常に単純。
>磁石のついた円盤をモーターで回すだけ!<
いや、ホント仕組みなんてそんなもんです。
自作の悩みどころはその仕組みを自分の技量でどこまで形にできるかですね。
先に今まで使っていた小さい方のバレル研磨機の仕様を見てみましょう。
こちらが先日までウチの主力であった自作バレル1号機くんです。
研磨容器は直径180mmのタッパーです。
では内部の画像↓
こんな感じでモーターに磁石のついた円盤が直結してあります。
1号機なので磁石の取り付けに試行錯誤の跡が見えますねー。
この後2台別のバレルを作った経験から、磁石は円盤に対して十字型に配置すれば効率がいいことがわかりました。
新型ではそちらの配置を踏襲してます。
で、バレルの心臓であるモーターなんですが実はこのモーター
要らない洗濯機から剥ぎ取ったものです。
洗濯機のモーターはなかなか優秀で交流100V駆動、トルクもそれなり、サイズ感もぴったり。
自作バレル向けの資材ですね( ´☉౪☉‘)
円盤はコイツの場合はたまたま余ってたアルミの円盤(たしかベルトサンダーについてた平面研削用の円盤)を使ってます。
磁石はヤフオクでストア出品されてる20mm径5mm厚のネオジム磁石です。
ホールソーで穴を開けて接着してあります。
円盤はアルミの加工が難しい場合はMDF板なんかでも十分だと思います。
モーターと磁石付きの円盤が用意できたら市販の鉄、アルミ資材(チャンネル、アングル材など)を上手いこと使ってモーターの固定とガワを作るだけです。
洗濯機モーターに円盤直結で使う場合は円盤径は200mm以下に抑えた方がよさそう。
直結ですとどうしてもトルク不足になりがちでそこまでたくさん研磨できません。
また、モーターにもかなりの負荷がかかってしまいます。
ボーダーラインは研磨重量200g、円盤径は200mmまでといったところでしょうか。
今回自作した新型バレルはこのボーダーラインを大きく上回るパワーを目指したわけですね。
効率アップのために色々考えましたわ。
ではいよいよ本題、新型バレルの制作過程です。
まず材料紹介。
・三相200Vモーター(200W)
・単相100V→三相200Vインバータ
・スイッチ用15Aブレーカー
・タイミングプーリーとベルト
・ベアリングフランジユニット(軸受)
・冷却用100Vファン
・各種鉄、アルミ材
・研磨容器(直径250mm)
こんなとこですね。
この他各種電材やネジ、ガワ用のステンメッシュとかありますがここでは割愛。
あとで制作費用載せときます。
では制作過程。
まず3.2mm厚の鉄板から円盤とモーターマウントを切り出します↓
この辺はフライス盤の真骨頂ですね。
いちいち硬いのでしっかり固定しながら穴開けやら切断は非常に面倒でした。
次に旋盤を使って円盤用のシャフトやシャフト固定用のフランジを挽き出します。
こんなのとか↓
必要なパーツを切り出したらネジ穴立てて仮組みしていきます↓
こんな感じでモーターからベルト駆動で円盤を回す仕組みですね。
モーターの最高速が大体1500rpm。
ここからタイミングプーリーの減速比で1000rpmにしてます。
速度を調整すると共に円盤の回転トルクをアップさせる狙い。
この後は鉄材を溶接して筐体を作っていきます。
詳細な設計図とか作らないので適当合わせで現物合わせです。
よく見なくても歪んでたりしますがそこは自作の味ということにしておきます。
概ね必要なパーツ制作が完了しました↓
ここから塗装して組み立てていきます↓
モーターとインバータを冷やすためにファンを回します。
冷却効率を考えてフレーム以外は金網で作ってみました。
最終的にステンレス板(磁性なしのやつ)でフタを付けて完成↓
このフタの上に研磨容器を置くので位置ズレしないようにゴムのクッションを貼ってあります。
意外と振動で容器が動きますからね。
といった感じでサクッと完成↓
ねっ?簡単でしょう?
制作期間は材料集めも入れて1週間半くらいかなぁ。
元々大型バレルの構想はあったのであり物と現物合わせでどんどん制作が進みました。
いちいち重くて硬いので加工やら大変でしたが^q^
嬉しい誤算としては
作ってみたら思いの外パワーがあって1キロどころか2キロまで平気で回せた
ってのがありまして^q^
インバータ駆動&減速ギアの組み合わせはパワーがえぐい( ´☉౪☉‘)
(まぁ2キロいっぺんに回すことなんてないと思うけど)
では最後に、今回制作にかかった費用と材料を簡単な箇条書きで。
・三相200Vモーター(200W):1000円(ジャンクコンプレッサーから剥いだ)
・単相100V→三相200Vインバータ:10000円(ヤフオク中古)
・スイッチ用15Aブレーカー:500円
・タイミングプーリーとベルト:3600円
・ベアリングフランジユニット(軸受):1800円
・冷却用100Vファン:2500円
・ネオジム磁石(20mm径5mm厚):4000円
・各種鉄、アルミ材:4000円
・フタ用ステンレス板(1.5mm厚):2000円(ヤフオク端材)
・ステンレス金網:1500円
・ネジ、電材その他:3000円
○材料費合計:33900円
大体こんなもんですかねー。
3万以下に抑えたかったけど予定より磁石いっぱい使うことになったのと冷却ファンやら金網でちょっと足が出た感じです。
それでもヤフオクやモノタロウのセールを上手く使って、市販品同等機種の20分の1くらいの金額で作れたはず。
当工房では貴金属アクセサリーの制作以外にもこういった機材の制作が可能です。(思い出したかのように宣伝)
「買うと高い機材は自分で作ってなるべく安く手に入れたい」という方は遠慮なくご相談くださいm(_ _)m
なお、この記事を読まれて自作に挑まれる方は怪我など十分お気をつけて臨んでくださいね。
こちらでは責任取れないので悪しからず。
私も制作中にネオジム磁石に掌を噛まれて血豆作ってしまった^q^